orosy story の記事では、次世代型ブランドの卸・仕入サービス 「orosy」が目指す世界観や、それを体現するトレンドや事例を深堀りして店舗様・ブランド様にご紹介して参ります。
前回の記事ではorosy立ち上げ経緯等についてお話しましたが、今回は、orosyの営業チームがコロナ渦による混乱の1年の中で、D2Cブランドや店舗・バイヤーと数多くお話してきた経験を振り返りつつ、orosyが考える実店舗(特にセレクトショップ)の役割についてお伝えしたいと思います。
目次
19年10月からorosyのビジネス責任者として、計画策定と営業を担当した岩田と申します。
以前は外資系戦略コンサルに5年ほど務めていましたが、もともと実家が下町の商店だったことと、大学で商店街・まちづくり分野を学んでいたことから、先進的なITサービスでまちの中小店舗を元気にするような仕事をしてみたいと思い、今のスタートアップに転職しました。
ただ転職して間もなく、コロナ渦に見舞われ、自粛期間中はorosyのプロトタイプを使いながら自宅からブランドと店舗に営業する日々。自粛期間が明けても、特に業界全体が苦境にある小売店・セレクトショップ様とは新規のお取引が難しい状況が暫く続きました。
それでも色々ともがいた結果、様々なご縁に恵まれ、卸先開拓の王道である合同展示会に1シーズンで5つも出展させて頂く※ などを経て、多くの小売店・バイヤー様との接点を得ることができました。orosyにご期待頂き登録を進めてくださったブランドの皆様にも、少しずつ店舗とのつながりが生まれはじめているかと思います。(中には、 CCC、ナノ・ユニバース、unicoなど誰もが知る著名セレクトショップ も多数いらっしゃいます)
※20年下期のorosyとしての展示会出展実績 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000035683.html
Image credit:https://biz-video.net/branding/158
コロナ渦で我々が色々ともがいていた一方で、世の中で急激に進んだのがEC化です。
Amazon・楽天・Yahoo等ECモールが業績を伸ばしていることは言うまでもないですが、2020年は特に今までの流通にはないコンセプトをもつ商品を企画し、ECやSNSチャネルを駆使して消費者直販で成長を遂げる D2C(Direct-to-Consumer)ブランドが一躍脚光を浴びました。orosyユーザーの中にも、D2Cと呼ばれるブランドが沢山いらっしゃって、「男らしく、を抜け出そう」や「毎日の家事をプラスの時間に変える」など独自のコンセプト・商品特徴を持っています。(D2Cブランドと卸売についての解説はまた別の機会に)
またブランド側だけでなく、 店舗側も実店舗への来客減を補うべく、ネットショップサービスを活用し続々とECサイトを立ち上げられています。20年12月に130万ショップを突破したBASEでも、直近の決算説明会資料※によると、その27.8%が実店舗を持つユーザーのようです。 ※https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08546/506262e6/d747/4750/9a65/de8c7839925a/140120201113424527.pdf
こうして、コロナ渦を期にブランドも店舗も一気にEC化が進んでしまうと、「未来の実店舗はモノ(物販)よりコト(体験型)消費が重要だ」といった論調も相まって、中長期的に 「今後実店舗で商品を売る役割は薄れていくのではないか?」 という声が聞こえてきます。特にコロナ渦でも業績好調な量販店やSPA型チェーンとは違って、価格・利便性訴求が難しいセレクトショップで商品を売ることは、ますます難しくなるのではという不安の声も聞きます。
ポストコロナの世界でも、本当にセレクトショップが商品販売する役割は薄まってしまうのでしょうか?
このテーマについては、業界の方々が購買行動の変化を先読みしながら試行錯誤されており、業界経験のない私が具体的に書けることは限られているのですが、この1年の卸営業の目線からは、選びぬいたブランドと共に「人から人へ、豊かな価値観を提案し続けること」 がセレクトショップの役割だと考えています。
もちろん消費者にとって「手にとって触れる、試着できる」など商品に紐づく体験的価値を伝えるリアルの場としての意味は大きいのですが、商品を通じて消費者の知らなかった価値観を伝えることの方がより本質的で、その意味で今までにないコンセプトや価値観を消費者に伝えることに長けたD2Cブランドと非常に近しい存在だと思います。
ただD2Cブランドと明らかに異なるのは、価値観の伝え方として、
など、デジタルでは再現しきれない 「人」ならではの伝え方(アート的とも言えます)を得意としている点で、ブランドと補完的な関係にあると考えます。
実際、D2Cブランドのお話を伺うと、店舗に期待する役割としては、単純な拡販やショールーム的機能よりも 「共にブランド価値を高めてくれること」という回答が圧倒的に多かったです。(そのためどんな店舗でも良いわけでなくご希望も様々です)
一方のセレクトショップやバイヤー側も、催事毎に忙しく商品を入れ替えることもありますが、基本的には「実店舗のテイストに合致した長期的に付き合えるブランド」を時間をかけ吟味しながら探していらっしゃいます。場合によっては同じショップレーベルでも、店舗毎に志向が異なることもあります(そのためどのブランドに興味を持って頂けるかは正直予測が難しいです)
ただそうやって互いに強いこだわりを持ったブランドとセレクトショップが晴れてマッチングできた時は、こだわりの価値観を店舗を通して消費者まで伝えきろうと、担当者間で非常に強い「熱量」が生まれることを感じます。実際、orosyのご紹介とともに商品を持参した対面営業やその同行にも数多く伺い、品定めをしていた担当者が急に盛り上がる瞬間を目の前で見てきました。
そしてブランドが発信し伝達する価値観は、セレクトショップ側でMD・VMDやコラボ商品といった「人」によるアレンジと、バイヤーや販売員など「人」からのコミュニケーションによって増幅し、「人」である消費者に伝えられます。
-こだわりのあるブランドとセレクトショップのマッチングでは強い「熱量」が生まれる- https://blog.orosy.com/retailer/blog/komons-nehan_tokyo/
抽象的ではありますが、そういったことが、商品数で圧倒するECモールや、効率重視の量販店等とは異なるセレクトショップの役割なのではないでしょうか?
また消費者の目線でも、将来全てのブランドと店舗でEC/SNSチャネルが広く活用されるならば、消費者はその中で最も熱心かつ丁寧に価値観を伝えてくれる「人」から商品を買い、セレクトショップは重要な選択肢となるはずだと信じています。
以上、セレクトショップの役割についてorosyの卸営業の経験から書きましたが、最後に関連してエピソードを2つ簡潔にシェアします。
1つ目は昔、地方都市のとあるセレクトショップ店長に、仕事のやりがいについて伺った以下の話です。
「ドキドキしながらお店に入ってくる若い子達の世界観を広げてあげて、今まで知らなかった各々の好きなもの=各々の個性や価値観、を見つけてもらうことがやりがいだと思っている」
海外にも買付に行くアパレル店でしたが、その他の実店舗全般にも共通するお話だと思い、深く感銘を受けたのを覚えています。
2つ目は、民泊プラットフォームairbnbの掲げるミッション 「Belong Anywhere(どこにでも居場所がある)」です(コロナの逆風の中、今月見事上場しましたね)
「Airbnbのミッションは、人と人とのつながりを築き、世界がより偏見の少ない、多様性を受け入れる場所となるよう貢献することです。それはつまり、誰もがどこにでも居場所のある世界をつくることです」- Airbnbヘルプセンター
余談ですが、私も2015年にLA ハリウッドの近くで初めてairbnbを使い、俳優を目指すネパール人のアパートに泊めてもらったのは刺激的な体験でした(結局母国に帰った彼と今もたまに話します)
orosyも「すべての人に自由なリテールを」のミッションのもと、ブランドと店舗、人と人をつなげ、多様な価値観を支えるプラットフォームになれることを切に願います。
そしてセレクトショップには、再び広がるコロナ渦により、また実店舗を開けない状況になったとしても、ブランドと協力して「人から人へ豊かな価値観の提案」 をぜひ続けて欲しいと願うと同時に、orosyもその支援をしていきたいと考えています。